
突然ですが、「会計」と聞いて何を想像しますか?
「数学がたくさん出てきて難しそう」
「細かい計算のオンパレード」
「簿記、バランスシートの名前は知っているけど、何に使うのか分からない」
収支を複雑に計算して難しく、つまらなそうと思っている人が多いのではないでしょうか。
そんな、「難しく」「つまらなそうで」「興味をひかれない」会計も、歴史の面白いエピソードと一緒なら、楽しく学ぶことができます。
例えば、会計用語の減価償却は鉄道の歴史と大きく関係があることなど。
こんにちは。ドムドムです。
読書と本の収集が趣味の、本が大好きな私が、
「面白い!」
「悩みや疑問と向き合えた!」
「新たな知識の扉が開いた!」
と感動した、おすすめの本を紹介します。
会計と歴史を一緒に学べるおすすめの本は、
『会計の世界史』です。
本の概要
タイトル:会計の世界史
著者:田中 靖浩
ページ数:423ページ
『会計の世界史』の著者は、ビジネススクールや企業研修で「会計」について講演をしている現役の会計士です。企業研修で難しい会計を楽しく学んでもらおうと、歴史を用いたところ受講者に大うけ。
講演での経験を基に、読者に
「好奇心とともに会計を楽しく理解してもらう」
「細かい計算や用語ではなく、歴史と会計を楽しく学ぶ」
ことを目指して書かれた本です。
「会計に興味がない」「歴史もあまり知らない」そんな人でも、心配無用です。
『会計の世界史』に登場するのは一度は聞いたことがある有名人、偉人ばかり。彼らと会計に関わる面白いエピソードを読み解けば、会計も歴史も楽しく学べること間違いなしです。
歴史を知っている人でも、初めて知る「知られざる物語」に出会えます。
この記事では、会計の歴史では外せない、「イタリア」と「イギリス」について紹介します。
イタリアから始まった会計の歴史

会計の歴史の出発点はイタリアです。
私は、会計は最近誕生したもので、「イギリスの産業革命から始まった」と思っていたので、非常に驚きました。
イタリアと聞くと、「芸術や食が魅力で、”長靴の形”をしている、時間がゆっくり流れる明るい雰囲気の国」と、会計やビジネスにはあまり関係のない国だと思っていました。
しかし、金融の基礎である銀行、会計の基礎である簿記はイタリアで生まれたのです。
なぜ、イタリアで会計が花開いたのでしょうか?
それは、当時のイタリアは、商人が集まる経済の中心地だったからです。
ヨーロッパ経済の中心はイタリアだった?

銀行や簿記が誕生した14世紀初頭。
ヨーロッパで人口10万人を超える都市は、パリを除いて全てイタリアにあったのです。
世界中から観光客が訪れる、ヴェネツィア・フィレンツェ・ミラノなど、今でも魅力あふれる都市です。
なぜ、イタリアに人が集まったのか?
それは、イタリアが経済の中心地だったから。
経済の活発な場所に人が引き寄せられるのは、日本の経済の中心地”東京”や、経済大国”アメリカ”と似ていますね。
イタリアで経済が発展した背景には、イタリアの立地が関係しています。
イタリアを地図で見てみると、ヨーロッパ半島から突き出た位置にあるのが分かります。
この立地のおかげで、ヨーロッパと東方世界(アラブ・アフリカ・アジアなど)を隔てる地中海の玄関口になったのです。
東方世界から珍しい香辛料・織物・陶器が、イタリアを通ってヨーロッパへ届けられ、商人の国として栄えました。
イタリアの立地は、東方との貿易を独占できる、恵まれた条件だったのです。
立地のおかげで経済の中心地になったイタリア。
国の置かれた立地・地形が、その国の経済や政治にどのような影響を与えるかは”地政学”で説明ができます。
歴史や会計と一緒に、地政学も学んでみてはいかがでしょうか。
銀行は「為替手形」から始まった!

東方貿易で商人や物が集まったイタリアで、世界初の銀行は誕生します。
東方から届けられる香辛料・織物・陶器を取引して得られる莫大な利益で、相当羽振りが良かった商人たち。
そんな商人を悩ませたのが、お金を持っていることによる危険です。
ネットやATMが無い時代。商人たちはイタリアで稼いだお金を、自分の国で使えるお金に替えて、持って帰る必要がありました。
アメリカで稼いだドルを円に両替し、飛行機で日本まで持ってくるようなものです。
大量のお金を持って移動すると、盗賊に襲われたり、船で移動すれば嵐に襲われて、せっかく稼いだお金が無くなってしまう危険があったのです。
そんな悩める商人のために誕生したのが、銀行(バンコ)。
国(当時は小さな都市国家)によって異なる通貨を使用していた当時、通貨の両替を行っていた組織がバンコです。
バンコは、商人たちの「お金を持って移動したくない」という需要に目をつけ、「為替手形」取引なるものを考えました。
為替手形はバンコに持っていくと、為替手形に書かれた金額を受け取れるシステムです。
お金を預けると、バンコで為替手形を発行してもらえます。
為替手形を別のバンコに持っていくと、代金を受け取れるという仕組みです。
現在のキャッシュレス決済のようなものです。
為替手形の登場で、銀行はヨーロッパ各都市に広がり
「危険な道中、お金を持ち歩かずに済む」
「大きな取引も為替手形でできる」など
金融システムがガラッと変わりました。
そんな商人の味方、銀行(bank)の名前の由来は長机です。
ヴェネツィアの商人が、机を挟んで取引をしていたから、イタリア語で長机(banco)と呼ばれるようになったんだとか。
銀行に限らず、イタリア発祥の会計に関する言葉は他にもあります。
危険を承知で船に乗り、様々な品を運ぶ勇敢な男たち”リズカーレ”(risicare)からリスクという言葉が生まれました。
会社を意味するカンパニー(company)は、一緒に(com)パン(pan)を食べあう仲間が由来です。
会計に関係する言葉の由来からも、当時のイタリアが経済の中心地だったことがうかがえます。
会計は難しい数字がいっぱいの面白くないものだと思わずに、その言葉の由来に思いをはせることで、少しは身近に感じてもらえるのではないでしょうか。
こういった思わず「へ~」となる、歴史の雑学を学べるのも、本書をおすすめする理由の1つです。
利息を禁じるキリスト教

現在の銀行は、お金が必要な人にお金を貸し、貸したお金に対して利息を受け取ることで利益を得ています。
しかし中世の時代は、商人が利息を取ることを禁じていたのです。
その理由が驚きです。
「キリスト教では、時間は神のものだから」。
時間は神の所有物であるから、時間に対して生じる利息も神のもの。
従って、商人が利息を得ることはダメですよ(証明完了)ということです。
神様を持ち出されたら、従うしかありません。
金貸しはキリスト教徒ではない、ユダヤ教徒が行っていました。
しかし、宗教で禁じられているといっても、
「儲けたい」「お金を借りたい」という人はいます。
そんな悩める商人が考えたのが、「これは利息ではありません」という屁理屈です。
お金を貸して得たお金は、
「お金を貸さずに、他のことに使えば儲けられたお金です」という、
天才的な屁理屈で「利息じゃないよ!失われたチャンスの補償だよ!」と言い換えました。
どうしても肉が食べたかった僧侶が、ウサギを食べて「これは鳥である。食べていいよね。(当時、鳥は食べて良かった)」と、1羽・2羽と鳥と同じように呼んだ話を思い出しました。
「どこにでも頭がキレる人がいるんだな~」と感心すると共に、人は何かを禁止されると必死に頭を使って、なんとしてでもかいくぐろうとする、したたかさがあるのかと改めて思いました。
経済の中心はイタリアからオランダ、そしてイギリスへ

この後、なんやかんやあって(本書では詳しく書いてあります)経済の中心はイタリアからオランダ、そしてイギリスへ移ります。
本記事では、日本と同じ島国のイギリスで、会計がどのように発展したのか紹介します。
「木材不足」のピンチをチャンスに変えたイギリス

経済の舞台は、産業革命によって「太陽の沈まない国」とまで呼ばれる、大繁栄を成し遂げたイギリスに移ります。
産業革命といえば、「蒸気機関の発明によって機械化が進んだエネルギー革命」だと授業で習ったと思います。
そんな産業革命のキッカケは「木材不足」だったことをご存じでしょうか。
イギリスでは度重なる戦争で、船舶や鉄を作るための材料として木材がたくさん伐採されたせいで、森林がどんどんなくなっていき、樹木伐採の制限令を出すまでになったそうです。
イギリスの「木材不足」は初めて聞いたので、気になって調べると驚きのことが分かりました。
現在のイギリス国土に占める森林率は世界137位(日本は18位)と、イギリスは世界で見ても森林が少ない国だったのです。(ランキング最下位の3カ国(カタール、ナウル、モナコ)は森林率0%だったのも驚きですが)
イギリスは日本と同じく自然豊かな国だと、映画ブレイブハート(スコットランドの英雄:ウィリアム・ウォレスを描いた映画)を見て、思っていましたが調べてみて、驚愕しました。
森林面積は2019年時点で、わずか319万ヘクタールしかなく、イギリス国土の13%にすぎません。
日本の森林面積が2,502万ヘクタールで国土の67%を占めていることを考えると非常に少ないです。
(データは林野庁ホームページ、世界経済のネタ帳:世界の森林率ランキングから参照)
各国と比べて、森林が少ないイギリス。
森林を伐採して得られる木材は、暖房・建築・製鉄など様々な産業で使用される、重要な資源です。
イギリスも樹木伐採の制限令を出すなどしていましたが、森林減少は止まりません。
このままでは、経済どころか生活が成り立たなくなるピンチです。
木材不足という、最大のピンチの時に注目されたのが、黒いダイヤとも称される”石炭”です。
黒いダイヤ”石炭”を掘るために、蒸気機関は誕生した?

イギリスでは16世紀ごろから石炭を使用していましたが、木材不足が深刻になるにつれ、燃料の代わりとなる石炭の需要が高まります。
木材不足のピンチヒッター”石炭”。
石炭の採掘は、手作業で炭鉱を掘り進める、大変な作業です。
石炭採掘で問題となったのが、地下水でした。
炭鉱は地下を掘り進めるので、地下水が大量に出てきます。
当初は手作業や馬を使って汲み出していた地下水ですが、らちがあきません。
そんな悩める問題を解決する新技術が、蒸気機関だったのです。
蒸気機関は炭鉱の地下水を汲み出す「排水ポンプの動力」として誕生したのです。
「必要は発明の母」と言いますが、まさしくその通りです。
木材不足から始まった石炭の採掘を助けるために、蒸気機関は開発されました。
蒸気機関のおかげで、たくさん掘り出される石炭。
人は様々な機械に応用します。
蒸気機関車の誕生エピソード

蒸気機関を使った乗り物で有名な、モクモクと煙を出して疾走する「蒸気機関車」。
蒸気機関の父は授業で習う”ジェームズ・ワット”ですが、蒸気機関車の父はだれかご存じでしょうか?
蒸気機関車の父は”ジョージ・スティーブンソン”です。
(私は初めて知りました)
ジョージは、炭鉱で排水ポンプの修理をするエンジニアの息子として育ちます。
「蒸気機関を乗り物に使えば、自走式の車両ができるのではないか?」
そんな夢を追い続けて、様々な実験をしたそうです。
本書で語られる様々なエピソードで最も印象に残ったのが、この蒸気機関車にまつわるエピソードです。
1830年9月15日「リバプール・マンチェスター鉄道」で蒸気機関車は産声を上げます。
蒸気機関車が初めて走る重要な日、運転するのは、蒸気機関車の父”ジョージ・スティーブンソン”本人。
イギリスの首相、政治家、見物人が集まる中、悲劇が起きます。
下車しないように注意がされていましたが、政治家数名が勝手に下車して、1名が機関車に轢かれてしまったのです。
病院へ運ばれたものの、死亡してしまいました。
初めての鉄道死亡事故は、初めて鉄道が走ったその日に起きたのです。
鉄道の誕生が、減価償却のキッカケ?

初めて走った日に、死亡事故が起こってしまった鉄道ですが、会計に大きな影響を与えました。
それは、「減価償却」です。
会計に携わらない人も、聞いたことがある言葉ではないでしょうか。
鉄道には、機関車や線路といったインフラなど、多額の資金が必要になります。
その資金を出したのが株主です。
(株式会社はオランダで誕生し、発展を続けていました。)
株主が、会社経営のためのお金を投資する。
会社は稼いだ利益を、配当金という形で株主に配当する。
会社の稼ぐ力を見極めて投資をする株主。
株主たちに、鉄道という新しい発明ならではの、2つの問題が降りかかります。
「新しい存在であり、どのくらい儲けられるのか予測がつかない」
「インフラ整備に多額の投資が必要で、設備に支出した年は利益が出ない」
特に、設備費が高く、設備を買った年は利益が出ないのが問題でした。
この問題を解決した考えが、「減価償却」です。
減価償却とは、設備費などの費用の全額を一度の期間に負担させるのではなく、数年に分けて負担するという考えです。
減価償却の誕生で「支出の平準化」ができるようになり、投資した年は利益が減少することが無くなりました。
鉄道という、
「多額の支出でインフラを整えないと使えない」
「インフラさえ整えれば、長期に渡って利益がでる」などの
当時としては新しいビジネスだったから、減価償却が誕生したのです。
銀行しかり、減価償却しかり、需要を見抜く人々のセンスの良さには脱帽です。
鉄道はアメリカへ渡り、経済の中心もアメリカへ

その後、アメリカでも大陸横断鉄道が完成し、経済の中心はアメリカへ移ります。
現在でも、トランプ大統領の一挙手一投足で世界の経済が動くほど、経済を牽引するアメリカ。
そんなアメリカの会計の歴史は、本書を読んで確認してください。
最後に

『会計の世界史』を読んで思ったことは、
「必要は発明の母」です。
「お金を持ち歩く危険性から誕生した銀行」
「石炭を効率よく採掘するために誕生した蒸気機関」
「時期によって配当が増減する問題から誕生した減価償却」など。
人は必要に応じて様々な問題を解決する発明や、物を作りだしてきました。
現在も様々な問題や変化がありますが、そのピンチを必要なものと捉え、チャンスに変えていく姿勢が、人類の進歩には必要ではないでしょうか。
本書に出てくる、
「ピンチをビジネスチャンスに変えた人」
「時代の変化を読み取り、上手に変化に乗った人」のように、
前向きに生きていきたいです。
『会計の世界史』を読んで、改めて歴史の面白さに気付きました。
会計用語の由来や、偉人や発明品のエピソードなど。知れば知るほど面白い本です。
私のおすすめの1冊ですので、ぜひ読んでいただければ嬉しいです。
