こんにちは。ドムドムです。
私が読んだ本からお勧めする、本の紹介です。
今回紹介する本は『歴史に残る外交三賢人』です。本書は、国際政治で重要な仕事を成し遂げた3人の外交家について、現在の日本・世界の抱える問題に絡ませながら紹介した本です。外交三賢人とは、ビスマルク、タレーラン、ドゴールを指しており、いずれも世論や時代の流れに対抗して、自国の外交・軍事政策を運営した偉大なる外交家です。
私にとって外交は馴染みのないものでしたが、3冊目に紹介した地政学と同じく、国際政治の理解につながる重要なことであり、国際政治とは外交そのものです。また、国際政治に限らず、自分のやりたいことをするにはどうすれば良いのかといった処世術も学べる本です。
目次
本の概要
タイトル:歴史に残る外交三賢人
著者:伊藤 貫
国際政治とはリアリズム外交である
3人は生きた時代は違いますが、リアリズム外交=バランス・オブ・パワー外交の維持を目的として、外交活動を行っています。
バランス・オブ・パワー外交とは、勢力均衡外交と訳され「国際政治において最も強力な覇権国をカウンター・バランスして、勢力均衡の状態を作る」ことを目指す政策と紹介されています。
これは近年に誕生した政策ではなく、古くは古代ギリシアでのアテネとスパルタによる勢力圏のバランス、巨大なハプスブルク家に対するフランス・イギリス等による30年戦争、そして現在ではアメリカ一強体制に対抗するロシア・中国等による政治勢力の均衡と、紀元前から現在まで続いている政策です。
ではなぜ、バランス・オブ・パワーなのか、なぜ3人が優れた外交家なのか。
世界政府は存在しない
歴史上、国連安保理や強大なアメリカなどの国はあっても、強制執行力をもつ機関は一度も存在していません。強力な軍事力を持った国が周辺諸国に侵略戦争を仕掛けても、誰にも止められないということです。現在でもロシアやイスラエルといった核保有国が戦争をして、国際犯罪だと叫ばれていますが、止められていません。
つまり、国際法や条約は自国の利益にならなければ、機能せず守ってくれない(役に立たない)ということです。自国を守るためには、強力な国に対抗する(少なくとも戦争させる気を起こさせない)ために、勢力均衡を作り出す必要があります。
感情を国際政治に持ち込むな
勢力均衡が自国を守るのに必要なことは分かったと思います。じゃあそれをすればいいじゃんと思いますが、そんな簡単なことではありません。外交は国内世論に影響されるからです。B国という強大な国に対抗するために、A国と同盟を結ぶ必要があると仮定します。しかし、A国とは過去に戦争をして、国内世論はA国は敵だ!同盟なんてとんでもない、といっている。このような状況では、世論を説得してA国と同盟を結ぶことは困難です。大抵の人は、目先のことしか考えていませんし、勢力均衡の重要性を理解できていません。
本書で紹介される3人は、国内の世論や時代の流れに飲まれずに、数年先の自国の利益を考え、勢力均衡外交をした点で評価されいるのです。3人の中で最もバランス・オブ・パワー外交が分かる、ビスマルクの外交・軍事政策を紹介します。
ビスマルクについて
ビスマルクと言えば”鉄血政策”をした人と習っただけで、血の気が多い人なのかな?と思っていました。しかし、本書を読んで見方が180°変わる衝撃を受けました。ビスマルクは、非戦主義で極めて打算的な勢力均衡主義者だったのです。
当時の情勢
ビスマルクが生まれたのは、現在のドイツの元となったプロイセン王国です。当時、ドイツ語を話すドイツ民族はいましたが、ドイツという国はなく35の諸侯が統治する国に分かれていました。プロイセンは諸侯の中では軍事力のある国でしたが、ドイツ民族でバラバラの国に分かれているため、強大な他国の侵略を受け言いなりになるしかありませんでした。
ビスマルクはそんなドイツの現状を知り、プロイセン指導のドイツ統一を目指して外交を行いました。
常に自国に有利な状況を作り出す
ビスマルクはドイツ統一のために生涯で3回戦争をします。順に対デンマーク、対オーストリア、対フランスです。ビスマルクは、戦争にあたり周辺諸国に根回しをして、常に有利な状況で戦争に臨んでいます。周りの国からしたら、ドイツという強い国ができるより、弱い国がひしめき合っていたほうが脅威になりません。そのため、戦争に介入してくることが想定されたため、他国が介入してこないように準備をしていたのです。
対デンマーク戦では、プロイセン単国で攻め込むのではなく、オーストリアと軍事同盟を結ぶことで、他国の介入を防いでいます。オーストリアは対デンマーク戦に協力すれば、自国の紛争問題にプロイセンが協力してくれるだろうと思っていました。日本の例ですが日清戦争で勝利した後、三国干渉(フランス・ドイツ・ロシア)によって、遼東半島を清国に返還してしています。強力な同盟者もしくはより強大な軍事力があれば、三国干渉はなかったことが考えられます。戦争という国家の一大事の遂行は、勝利した後のことも考えて極めて打算的でなければいけないことが分かります。
対デンマーク戦で勝利した次は、一時は協力したオーストリアと戦争をします。オーストリアはデンマーク戦に協力した見返りとして、イタリアとの紛争に協力するようプロイセンに要請しますが、ビスマルクは断ります。手のひらを返されたオーストリア国内は反プロイセン感情が高まり、戦争へと進んでいきます。
対デンマーク戦ではオーストリアが必要だったが、ドイツ統一のためにはオーストリアとは戦争しなければならないことをビスマルクは理解していたのです。(対デンマーク戦の前からオーストリアとは必ず戦争になると考えていたというから驚きです)
自国の利益のためなら、好き嫌い、過去の関係を外交に持ち込まないリアリズム外交をしています。
非戦主義者
ビスマルクは対オーストリア、対フランス戦に勝利し、念願だったプロイセン主導によるドイツ統一を成し遂げ、ドイツ帝国を創立します。しかし、その後は一度も戦争を起こしていません。ビスマルクは当初から「ドイツ統一に必要な戦争が終わったら、二度と戦争はしない」という明確なビジョンを持っていたのです。本書では、”戦争する時としないときを明瞭に峻別する能力があるまれにみるリアリスト”としてビスマルクを称賛してます。
ビスマルクはドイツ統一という、明確な目標のために必要最小限の戦争をしています。日本は、日中戦争からズルズルと太平洋戦争をしました。原因のひとつとして、明確な戦争の目標、目標がないから終わりのビジョンがないことがあげられるのではないでしょうか。
余談ですが、ビスマルクは戦争でプロイセン側が大勝した後は、不機嫌だったそうです。あまりに大勝すると相手国に復讐心を植え付け、未来のドイツにとって利益にならないからと。改めて、戦争は勝つだけではなく、勝った後のことが重要だと分かります。
最後に
ここで取り上げたビスマルク以外のタレーラン、ドゴールについても、それぞれの外交・軍事政策について詳しく記載されています。日本の教科書に出てこないのでビスマルク以上に馴染みのない人物ですが、目的のために外交・軍事政策にどのように取り組んだのか、面白いエピソードを交えて記載されています。3冊目に紹介した「地政学」と合わせてぜひ読んでみてください。![]()
