ジャック=ルイ・ダヴィッド - histoire image: info pic, パブリック・ドメイン, リンクによる
ジャック=ルイ・ダヴィッド「サン=ベルナール峠を越えるボナパルト」
こんにちは。ドムドムです。
今回は、「軍事学の本の紹介」です。
「人類の歴史は戦争の歴史」と言われるほど、人類は今までに数えきれない程たくさんの戦いを経験してきました。
国家存亡を賭けた戦争はまさしく真剣に、
「どうやって勝つか」を考え続けてきた究極の実践的な学問であり、軍事学を学ぶことは戦争以外にも役立ちます。
そんな役に立つ軍事学について書かれた本の紹介。
第2弾は「戦い」にスポットを当てた本です。
紀元前から現代までの有名な戦い、知られざる戦いを知ることができる「軍事学初心者」におすすめの本です。
有名な戦いの知られざるエピソードも紹介されているので、軍事マニアの皆さんにもおすすめの1冊です。
こんにちは。ドムドムです。
読書と本の収集が趣味の、本が大好きな私が、
「面白い!」
「悩みや疑問と向き合えた!」
「新たな知識の扉が開いた!」
と感動したおすすめの本を紹介します。
紹介する本は、
『世界を変えた世紀の決戦』です。
本の概要
・タイトル:世界を変えた世紀の決戦
・著者:世界戦史研究会
・ページ数:222ページ
本書では、教科書で習ったこともある超有名な戦いから、戦史に興味が無い人は聞いたことがない戦いまで「世界を変えた戦いBEST46」を学ぶことができます。
戦いに至った背景、世界に与えた影響などをイラストで詳細されているので、軍事学初心者でもスラスラ読むことができます。
古代から20世紀まで46の戦いが登場するので、軍事マニアでも知らない戦いに出会えるかもしれません。
紹介されている戦い
本書では、46の戦いを10のジャンルに分けて紹介されています。
- この戦いがすごい!ベスト6
- 名将たちの戦場①
- 完勝・圧勝の戦い
- 成功した撤退作戦
- 名将たちの戦場②
- 史上名高き攻囲戦
- 玉砕・全滅の戦場
- 「銃vs槍」の戦い
- 「神風」の吹いた戦場
- 新兵器登場の戦い
1つの戦いは4ページほどで紹介されているので、スラスラ読み進めることができます。
気になった戦いがあれば、ぜひご自分で調べてみてください。新たな気づきや驚きに出会えますよ(体験談)。
本書で紹介されている、私が興味を持った戦いを3つ紹介します。
アウステルリッツの戦い

フランソワ・ジェラール - L’Histoire par l’image [1], digital version produced by Agence photographique de la Réunion des musées nationaux [2], パブリック・ドメイン, リンクによる
フランソワ・ジェラール「アウステルリッツのナポレオン」
1つ目に紹介するのは「アウステルリッツの戦い」です。
アウステルリッツの戦いは、「戦史に燦然と輝くナポレオンの傑作」とも評されており、本書では「この戦いがすごい!ベスト6」に選ばれています。
私は本書を読むまで、ナポレオンの名前こそ知っていましたが、何をした人物かは知りませんでした(知らないというより興味が無かったです)。
ナポレオンが関わった戦い(アウステルリッツ、ワーテルロー、トラファルガルなど)を本書で初めて知って、ナポレオンやフランス革命に興味を持ち、今ではナポレオンの大ファンです(記事トップの「サン=ベルナール峠を越えるボナパルト」の絵をPCのデスクトップにしてます)。
概要
アウステルリッツの戦いは1805年12月2日に、ナポレオン率いるフランス帝国軍と、対仏大同盟を組んでフランス軍に対抗するロシア帝国・オーストリア帝国連合軍との間で発生した戦いです。
フランス皇帝「ナポレオン・ボナパルト」、ロシア帝国「アレクサンドル1世」、オーストリア皇帝「フランツ1世」の3人の皇帝が戦いに参加したことから、三帝会戦とも呼ばれています。
アウステルリッツの戦いは、ナポレオン率いるフランス帝国軍の圧勝で終わり、ナポレオンのヨーロッパ支配に大きな影響を与えました。
ポイント:戦史に燦然と輝くナポレオンの戦い
なぜアウステルリッツの戦いが「戦史に燦然と輝くナポレオンの傑作」と呼ばれているのでしょうか?
「兵力劣勢ながら大勝した」「その後のヨーロッパに影響を与えた」など様々な理由があると思いますが私は、
「ナポレオンが思い描いたとおりに戦いが進み、勝利した」からだと考えています(異論は認めます)。
指揮官は戦いが始まる前に様々な作戦を考え、勝利のために奮闘します。
しかし、実際の戦闘が始まると部隊の士気、天候、敵の予想外の動きなど「戦場の霧」と呼ばれる予測不可能な場面に遭遇し、当初の計画の50%も実行できないそうです。
アウステルリッツの戦いは、「ナポレオンが勝利のために描いたとおりに戦闘が計画した戦い」なのです。
ナポレオンがどのように勝利を思い描き、勝利のために行動したのか。
ナポレオンは兵力劣勢の中、戦闘に有利な高地をあえて敵に差し出します(丘や高地といった地形は、戦場を見渡しやすい重要な地形)。
また、ナポレオンの右翼は他と比べて手薄で、それを見抜いた連合軍はナポレオン軍の右翼に攻撃を仕掛けます。
右翼は押され、あと一息で崩壊しそうだということで、連合軍は高地からも兵力を割いて右翼への攻撃を強化します。
ナポレオン大ピンチ!と思われますが、すべてはナポレオンが思い描いたとおりに進んでいました。
高地の連合軍が手薄になったタイミングで、高地から見えない場所に潜ませていた部隊に攻撃を命じます。
「ただ一撃で、この戦争は終わる」
思いがけないフランス軍の攻撃に少ない部隊では対抗できず、高地を奪取され連合軍の右翼と左翼の中央に大きな間隙が生じます。
中央が突破されたことで、連携が取れなくなった連合軍にフランス軍が襲い掛かり、連合軍部隊は崩壊。
フランス軍の戦死者1,305人に対して、連合軍は15,000人が戦死し、12,000人が捕虜になり、フランス軍の圧勝で終わります。
ナポレオンは敵の中央を崩して勝利することを考え、実現するために連合軍に2つの罠「高地を敵に差し出す」「自軍右翼に敵の攻撃を誘発する」を仕掛けたのです。
結果はナポレオンの勝利に終わりましたが、高地への突撃が遅ければ右翼が崩壊し、早ければ高地の敵が残っているため、高地を奪取できません。
天才ナポレオンだから成功した「戦史に燦然と輝く戦い」です。
バラクラヴァの戦い
2つ目は、「バラクラヴァの戦い」です。
イギリス軍の勇猛なエピソードが登場する「カッコイイ」戦いです。
概要
バラクラヴァの戦いは、ナイチンゲールが活躍した「クリミア戦争(1853-1856)」の戦いの1つです。(もちろん私は、本書を読むまで知らなかった戦いです)
1854年10月25日、セヴァストポリ要塞を攻囲するイギリス・フランス・オスマン連合軍に対して、ロシア帝国が攻囲を破るため、連合軍の補給港「バラクラヴァ」へ進撃したことで発生した戦いです。
ポイント:勇猛さを今日に伝えるイギリス兵の活躍
バラクラヴァに進撃するロシア帝国軍25,000人に対し、防衛するイギリス・トルコ連合軍はわずか4,500人。
5倍以上のロシア帝国軍相手に、イギリス・トルコ連合軍は超人的ともいえる活躍でバラクラヴァを守り抜き、勝利します。
中でもイギリス軍は勇猛に戦い、3つのエピソードが今日まで語り継がれています。
騎兵突撃を粉砕した「シン・レッド・ライン」
バラクラヴァへ至る堡塁を次々突破し、進撃するロシア軍。
堡塁を攻略したロシア騎兵4,500がバラクラヴァに迫ります。
その前に立ちはだかったのが、コリン・キャンベルが指揮する第93高地歩兵連隊。
第93高地歩兵連隊は、二列横隊を組み、三度にわたる一斉射撃でロシア騎兵の突撃を粉砕。
ロシア騎兵を粉砕した第93高地歩兵連隊の活躍は、二列の薄い横隊とイギリス軍の赤い制服の色から「シン・レッド・ライン(緋色の薄い戦列)」と呼ばれ、現代まで語り継がれています。

ロバート・ギブ - nms.ac.uk/, パブリック・ドメイン, リンクによる
ロバート・ギブ「シン・レッド・ライン」
6倍の敵を崩壊させた重騎兵旅団の突撃
第93高地歩兵連隊に阻まれたロシア騎兵3,500は、進路を変えてスカーレット准将が率いるイギリス重騎兵旅団に向かいます。
イギリス重騎兵旅団は600人しかいませんでしたが、3,500人のロシア騎兵に向かって逆に突撃を実施。
なんと6倍以上の敵を崩壊させました。
防衛側が数倍の敵を撃退する話はあれど、こちらから攻撃を仕掛けて数倍の敵に勝利する例は少ないと思います。
6倍の敵に突撃したイギリス重騎兵旅団の士気の高さが伝わります。
死の谷へ突撃した軽騎兵旅団
3つ目は勇敢にも砲兵陣地へ突撃した、イギリス騎兵のエピソードです。
ロシア軍の砲兵隊が高地へ展開しているのを確認したイギリス軍は、カーディガン伯爵ジェイムズ・ブルードネル率いる軽騎兵旅団700に対して、高地への攻撃を命令。
しかし、軽騎兵旅団への命令を伝えた連絡将校が誤って、攻撃目標を「谷の奥に陣取っているロシア砲兵部隊」と伝えてしまいます。
その場所には、すでに大砲と銃で防衛体制を整えたロシア軍が。
ここに無謀とも思える軽騎兵旅団の突撃が開始されます。
左右正面から降り注ぐ砲弾によって、みるみる騎兵旅団は損害を受けます。
あわや全滅と思われたその時、アフリカ騎兵連隊が高地を襲撃したことで、ロシア軍の砲撃が弱まり、そのすきに軽騎兵旅団は撤退できました。
軽騎兵旅団の死傷者は274名にのぼり、壊滅的な損害を被ったのです。
この軽騎兵旅団の突撃は勇敢さを讃えられ、絵画や文学などの題材になっています。
関係ないですが、騎兵突撃といえばロードオブザリングのローハン騎兵の突撃がカッコいいですよね。

リチャード・ケートン・ウッドヴィル・ジュニア - 不明, パブリック・ドメイン, リンクによる
リチャード・ケートン・ウッドヴィル・ジュニア「軽騎兵旅団の突撃」
バラクラヴァの防衛に成功した連合軍は、クリミア戦争を有利に進め勝利します。
勝利の裏には、勇敢なイギリス兵の活躍があったのです。
サラミスの海戦
最後に紹介するのは「サラミスの海戦」です。
「海戦」とあるように海での戦いです。
概要
サラミスの海戦は、紀元前5世紀にアケメネス朝ペルシア帝国と、ギリシア世界との戦争である「ペルシア戦争」の1つの戦いです。
紀元前480年、ペルシア王クセルクセス1世は、10万を超す軍隊と400を超す軍船でギリシア世界への侵攻を開始。
対するギリシア都市国家の連合軍は、数万程度。
狭い地峡部で侵攻を阻止しようと、レオニダス1世率いるスパルタ軍が奮戦しますが敗れてしまいます(テルモピュライの戦い)。
テルモピュライの戦いの敗北によって、ペルシア軍を阻むものはなくアテナイが陥落。ギリシア連合軍は、ラサミス島まで撤退します。
ここにギリシア世界の命運をかけた決戦「サラミスの戦い」が勃発します。
ポイント:勝つためにあらゆる準備をしてすべてを使え!
テミストクレスの銅像(wikipediaより引用)
ギリシア艦隊を率いるのは、偉大なるアテナイの指導者「テミストクレス」。
テミストクレスはこの戦いで勝つために、あらゆる手を使います。
- ペルシア軍がギリシアへ侵攻するのを10年前に予想し、海軍を強化。
- 様々な都市国家が集まったギリシア連合軍をまとめるため、賄賂や買収を行う。
- 10万を超すペルシア軍は、艦船を使った補給が無いと勝手に崩壊すると判断し、艦船同士の決戦で勝負をつける「海上決戦論」を展開。
あくまで陸上での決戦を主張するギリシア連合軍を海上決戦に導くため、当時絶対視されていた神託を利用。 - ペルシア戦争が始まる前からペルシア側と交渉し(ギリシア軍の情報を流した)、ペルシア軍が自分を信じるように仕向ける。
- サラミスまで追い込まれ、「海戦やむなし」の意見が強くなってきたこの期に及んで海戦を避けようとする都市国家に対して「海戦に反対するなら、アテナイはペルシア軍と手を結ぶ」と脅す。
- 大軍に不利なサラミス海峡に誘い込むため、「戦いが始まればアテナイはペルシア軍に付く」と情報を流し、ペルシア軍を油断させる。
10年前からペルシア軍の襲来を予想し、海軍を強化しただけでもすごいですが、賄賂や買収、嘘、恫喝、さらには神託まで利用するとは。
「自分が思い描いた勝利のためにあらゆることを検討し、準備する」
絶対に勝つ!という思いが伝わってきます。
テミストクレスの働きかけもあり、ギリシア連合軍はサラミスでペルシア軍を迎え撃つことを決定。
ちょうどその時、ペルシア軍はギリシアを裏切るといったテミストクレスを信じ、狭いサラミス海峡に400を超える軍船で侵入。
ここにギリシア世界の運命を賭けた決戦「サラミスの戦い」が始まります。
テミストクレスは戦いが始まる直前
「勝利は計画のなかにあり。神は決して不注意を許さないことを思い知れ!」と叫び、アテナイ艦隊に突撃の命令を下します。
ペルシア艦隊は、味方のはずのアテナイの攻撃に驚き反撃を命じますが、狭いところに密集しているため思うように動けません。
アテナイ艦隊が船体のもろい横腹に衝角攻撃を行い、ペルシア艦隊はみるみる劣勢になり大混乱。
結果は、ギリシア連合軍の圧勝。ペルシア艦隊は崩壊しました。
この海戦に勝利したことで、ペルシア陸軍は補給を受けられなくなり、本国に撤退します。
サラミスの海戦は、「史上初めて海戦で戦争を決した戦い」として、戦史に輝いています。
ギリシア世界を救った英雄テミストクレスですが、独善的な態度が嫌われ国外追放されてしまいます。亡命先はなんとペルシア。
再度ペルシアがギリシアに攻め込もうとして、テミストクレスは艦隊を率いるよう命じられますが、「祖国に槍を向けることはできない」として、毒をあおって命を絶ちます。
救国の英雄の最後としては悲しいですね。
最後に
紹介した戦いは3つとも、劣勢な軍が数倍の敵に立ち向かう構図です(たまたまです)。
判官贔屓と言われればその通りですが、私は劣勢の軍隊が必死に戦う構図が大好きなのです。
第二次世界大戦のドイツ軍が好きで、よく戦車や兵士のプラモデルを作っていますが、ドイツ軍が勝利したポーランド、フランス戦はあまり好きじゃないんですよね。
圧倒的多数のソ連・アメリカ・イギリス軍相手に、少数の部隊があの手この手で戦う場面が好きなんですよ。
自分語りが過ぎましたが、本書では、紹介した3つの戦いの他に多くの戦いを知ることができます(圧勝の戦いもありますぞ)。
歴史を知り、偉人に触れられる1冊です。
是非読まれてみてはいかがでしょうか。

