山本勘助:松本楓湖 - http://tabikoborebanashi.cocolog-nifty.com/blog/2006/12/post_b236.html, パブリック・ドメイン, リンクによる
2007年に放送されたNHK大河ドラマ「風林火山」。
オープニング冒頭、
「疾(はや)きこと風の如く、
徐(しず)かなること林の如く、
侵掠(しんりゃく)すること火の如く、
動(うご)かざること山のごとし」
以上の風林火山の句から始まり、疾走感あふれる特徴的な曲が続く。
時は群雄割拠の戦国時代。
武田信玄に仕えた伝説の軍師「山本勘助」の生涯を、内野聖陽さんが演じた。
「兵は詭道なり」「戦わずして勝つ」など、カッコいい兵法の言葉がたくさん登場したのを、いまだに鮮明に覚えています。
こんにちは。ドムドムです。
読書と本の収集が趣味の、本が大好きな私が、
「面白い!」
「悩みや疑問と向き合えた!」
「新たな知識の扉が開いた!」
と感動したおすすめの本を紹介します。
今回紹介するのは、武田信玄といった戦国武将のみならず、現在の大企業の経営陣にも影響を与え続けている、古代中国の兵法書『兵法三十六計』です。
本の概要
・タイトル:兵法三十六計 ~世界が学んだ最高の”処世の知恵”~
・著者:守屋 洋
・ページ数:221ページ
本書は、古代中国の兵法書「兵法三十六計」を現代語にして、実例をもとに分かりやすく解説された本です。
兵法三十六計は、古代中国において勝つための策略が書かれた本で、著者も書かれた時代も不明です。
5世紀頃の中国。斉という国の将軍であった檀道済(だんどうさい)にまつわる言葉にヒントを得て、まとめたものが兵法三十六計という兵法書です。
第一計から第三十六計まで、計三十六個の策略があり、「三十六計逃げるに如(し)かず」は聞いたことがある方も多いと思います。
兵法三十六計には、長い中国の歴史で蓄えられた「勝つための策略」が詰まっており、戦争のためだけではなく、企業戦略の指針として、人生を生きる処世の知恵としても活用することができる、人生の指南書です。
「戦わずして勝つ」ことが最上の策である

中国には長い歴史で蓄積された、勝つための策略をまとめた「兵法書」が多くあります。「孫子」「呉子」「三十六計」など。
武田信玄やナポレオン、ビルゲイツなど、世界に名を残す偉人に影響を与え、いまだにビジネスマンには必読とされるものもあります。
そんな多くの人が処世の知恵を求める「兵法」には何が書かれているのでしょうか?
中国の兵法書に共通するのは「戦わずして勝つことが最上の策」という考えです。
例えば孫子には、
「百戦百勝は善の善なるものにあらず。戦わずして人の兵を屈するは善の善なるものなり」
という有名な言葉があり、百戦百勝するよりも戦わずに勝つことの方が望ましいと書いてあります。
なぜ戦わずに勝つことが望ましいのか?
- 味方の兵力を温存できる
- 今日の敵でも明日の味方にできる
勝っても味方に損害が出るし、今日の敵は明日の味方になるかもしれない。
損害を出して敵を撃ち破るより、策略で敵を味方に付けたほうが良いということです。
つまり「力」ではなく、「頭」で勝つ。
「兵は詭道なり」どんな手段を使っても勝つ
戦わずに勝つことの重要性は認識頂いたと思います。
では、どうすれば「戦わずして勝つ」ことができるでしょうか?
方法はおおむね次の2つです。
- 外交交渉によって相手の意図を封じ込める
- 謀略によって相手の力を削ぎ、内部崩壊にみちびく
「力」ではなく、交渉・謀略といった「頭」を使い、相手の動きを封じ、内部崩壊に導く方法が「兵法三十六計」を始めとする兵法には記載されているのです。
また兵法書では、「戦いに勝つためにはどんな手段を用いても構わない。いや、どんな手段を使ってでも勝つのだ」と勝つことの重要性を説いています。
日本では、「卑怯な手を使ってはならない」「敵から逃げるのは卑怯だ」、といった思想が根強いですが中国では、「相手を騙すのは当たり前」「騙される方が悪い」「勝てない戦いはせずに逃げる」、といった考え方が常識とされています。
中国では多くの国が武力で誕生し、同時に多くの国が武力によって消滅しました。
比較的平和な日本とは違い、戦いに負ければ国が滅亡するのを実体験として経験してきているので、勝つためには手段を選ばない考えが根付いたのではないでしょうか。
「兵は詭道なり」
戦いとは騙し合いであり、敵を欺き策略を巡らすことこそが勝利への道なのです。

孫子を記した「孫武」 1994., パブリック・ドメイン, リンクによる
どんな策略も使い方が間違っていると役に立たない
ここまで、
- 「戦わずして勝つことが最上の策」
- 「兵は詭道なり」。戦いをする以上、どんな手段を使っても勝たなければならない
といった、兵法の基礎を紹介しました。
いよいよ、兵法の内容に移りますが、その前にもう一つ重要なことがあります。
どんな兵法・策略にも「いつでも使えて、必ず勝てる万能の策略はない」ということです。

本書でもここは強調して書かれており、
- 策略を実行する際は、彼我の状況をしっかりと読み取る必要がある。状況を無視してやみくもに適用すれば、失敗を免れない。
- あくまでも法則性にのっとり、無理のない運用を心がけること。一か八かの冒険はしてはいけない。
- 勝算なしと見極めたときは、ためらわずに撤退すること。ずるずると泥沼に引き込まれてそのあげく、元も子もなくしてしまうのは、最も拙劣な戦い方である。
など、「あくまで彼我を知り、現実に立脚し、臨機応変に対応しないと成功はない」と断言しています。
兵法は奇跡を起こす「神がかりの必ず勝てる必勝法」ではありません。
戦の天才と言われた「諸葛亮孔明」「アレクサンドロス大王」「ナポレオン」といった偉人も常に同じ策略を使ったわけではありません。
状況を冷静に分析し、状況にあった策を使えたから天才と言われているのです。
使い方が重要だと分かる例に、兵法三十六計に登場する2つの正反対の策略があります。
・第十六計:欲擒姑縦(よくきんこしょう)「完全包囲して敵のやる気を出させるより、逃げ道を作って相手が逃げるのを待ってから追撃する」
・第二十二計:関門捉賊(かんもんそくぞく)「敵を包囲し徹底的に撃滅する」
この二つの計は包囲した敵に対しての策略ですが、対応の仕方は正反対です。
第十六計の欲擒姑縦は、「敵を完全包囲すると死に物狂いで応戦してくるため、逃げ道を作っておけ」というものですが、第二十二計の関門捉賊は、「禍根を残さないように敵を包囲し徹底的に撃滅しろ」という策略です。
どちらを使うかはその時々で、臨機応変に決める必要があります。
こちらの戦力が圧倒的に敵より多ければ、敵を包囲し徹底的に撃滅したほうがよいかもしれません。逆に戦力が拮抗していれば、敵の戦意を削ぐためにあえて逃げ道を作ったほうがよいかもしれません。
また、兵法で有名な「背水の陣」。
逃げ場のない水路の前に陣取り、退路を断つことでやる気を出してことに挑む策略ですが、どんなときも背水の陣を頼りに挑めばいいというわけではないのです。
実際に背水の陣を使って勝利した「韓信」は、背水の陣だけで勝利を手にしたのではありません。
敵に対して圧倒的に兵力不足だった韓信は、部隊を二つに分けます。
一つの部隊は敵を拠点からおびき出し、川を背にして死に物狂いで時間稼ぎをする。
もう一方の部隊は、つられた敵の拠点を占領する。
戦いは韓信の作戦通りに進み、敵はおとりの部隊につられ拠点から出てきます。
背水の陣の部隊が必死に戦っている間に、別動隊が敵の拠点を占領し、挟み撃ちにして韓信は少数の兵力で大勝利を挙げたのです。
これから分かるのは、「背水の陣」だけでは勝てないこと。
別動隊による拠点への攻撃という策を持っていたからこそ、韓信は勝利できたのです。
追いつめられた状況において「背水の陣」だけで戦っても勝利はできません。
戦い方は技術の進歩や彼我の状況、置かれた状況によって変わります。
これはビジネスや人生でも同じです。いつも同じ状況はありません。
自分が使える策略を持っておいて、臨機応変に状況に合わせて使い分けることが何よりも重要なのです。
兵法三十六計の内容
いよいよ兵法三十六計に記されている、三十六の策略を見てみましょう。
ここでは策略の意味だけを紹介しますが、本書では実際にどのように戦いで使われたか詳細に紹介されていますので、是非本を読んでみて頂ければと思います。
また「兵法」の名が示す通り、主に戦いでの使われ方について書かれていますが、ビジネスの場で、人生を生きる処世の知恵として、活用することができるので、実生活と照らし合わせて考えて頂ければより役に立つことでしょう。
最初に:現実に立脚せよ
策略の手口は無数にあるが、策略を用いるにおいては現実を無視してはならない。
現実に立脚して、臨機応変に運用してこそ、成功が保証されるのである。
勝戦の計
こちらが圧倒的に優勢で、主導権を握っている場合の戦略。
■第一計:瞞天過海(まんてんかかい)
天を欺(あざむ)いて、海を過(わた)る。
偽装を用いて相手を誘い、つられた相手の油断をついて一気に叩く。
■第二計:囲魏救趙(いぎきゅうちょう)
魏を囲んで趙を救う。
強大な敵と戦う場合、敵の戦力を分散させ弱点を攻撃するのがよい。
■第三計:借刀殺人(しゃくとうさつじん)
刀を借りて人を殺す。
自分の手を使わず、第三者(できれば敵)を利用して、敵をやっつける。
■第四計:以逸待労(いいつたいろう)
逸を以って労を待つ。
自軍は余裕のある状態を保ちながら、敵が疲れて自滅するのを待つ。
■第五計:趁火打劫(ちんかだきょう)
火に趁(つけこ)んで劫(おしこみ)を打(はたら)く。
敵の弱みにつけこみ、一気に叩く。
■第六計:声東撃西(せいとうげきせい)
東に声して西を撃つ。
陽動作戦を仕掛け、それにつられた敵の裏をかいて攻撃する。
敵戦の計
こちらが優勢で余裕をもって戦えている場合の戦略。
■第七計:無中生有(むちゅうしょうゆう)
無の中に有を生ず。
ないものをあるように見せかけ、相手の判断をまどわす。
■第八計:暗渡陳倉(あんとちんそう)
暗(ひそか)に陳倉に渡る。
ある地点を攻撃すると見せかけ、実際は別の地点を攻撃する。
■第九計:隔岸観火(かくがんかんか)
岸を隔てて火を観る。
相手に内部分裂の兆しがあれば、攻め込まず静観し、相手の自滅を待つ。
■第十計:笑裏蔵刀(しょうりぞうとう)
笑いの裏に刀を蔵(かく)す。
友好的な態度で接近し、相手が警戒心を解いたら一気に襲い掛かる。
■第十一計:李代桃僵(りだいとうきょう)
李(すもも)、桃に代わって僵(たお)る。
李を犠牲にして桃を手に入れる。肉を切らせて骨を断つ。
■第十二計:順手牽羊(じゅんしゅけんよう)
手に順(したが)いて羊を牽(ひ)く。
どんな小さな隙も見逃さずに、つけこまなければならない。
攻戦の計
相手が強く、一筋縄ではいかない時の戦略。
■第十三計:打草驚蛇(だそうきょうだ)
草を打って蛇を驚かす。
敵情が不明であれば、偵察によって確かめ、情報を入手してから行動に移る。
■第十四計:借屍還魂(しゃくしかんこん)
屍を借りて魂を還す。
勝利のためであれば、利用できるものは何でも利用する。
■第十五計:調虎離山(ちょうりこざん)
虎を調(あしら)って山を離れしむ。
有利な地点にいる敵には攻撃せず、誘い出してこちらの有利な地形で戦う。
■第十六計:欲擒姑縦(よくきんこしょう)
擒(とら)えんと欲すれば姑(しばら)く縦(はな)つ。
完全包囲して敵のやる気を出させるより、逃げ道を作って相手が逃げるのを待ってから追撃する。
■第十七計:抛磚引玉(ほうせいいんぎょく)
磚(れんが)を抛(な)げて玉を引く。
食いつきそうなエサをおとりにして、食いついてきた敵を撃滅する。
■第十八計:擒賊擒王(きんぞくきんおう)
賊(ぞく)を擒(とら)えるには王を擒(とら)えよ。
敵を壊滅させるには、敵の主力、あるいは中枢を壊滅させなければならない。
混戦の計
彼我の実力が拮抗しており、相手が手ごわい時の戦略。
■第十九計:釜底抽薪(ふていちゅうしん)
釜の底より薪(まき)を抽(ぬ)く。
強大な敵を倒すためには、敵の死命を制するような弱点にねらいをつけなければならない。
■第二十計:混水模魚(こんすいもぎょ)
水を混(かきま)ぜて魚を模(さぐ)る。
相手の内部混乱に乗じて勝利を収める。
■第二十一計:金蝉脱殻(きんせんだっかく)
金蝉、殻を脱す。
現在地にとどまっているように見せかけながら退却する。
■第二十二計:関門捉賊(かんもんそくぞく)
門を関(とざ)して賊を捉える。
敵を包囲し徹底的に撃滅する。
■第二十三計:遠交近攻(えんこうきんこう)
遠く交わり近く攻む。
遠方の国と同盟し、近くの敵を攻める。
■第二十四計:仮道伐虢(かどうばつかく)
道を仮りて虢(かく)を伐(う)つ。
強者が弱者を併呑する戦略。弱者の窮状につけこんで併呑する。
併戦の計
同盟国と連合して戦う時に、有利に立つための戦略。
■第二十五計:偸梁換柱(とうりょうかんちゅう)
梁(はり)を偸(ぬす)み柱を換(か)う。
相手を操縦するために骨抜きにする。
■第二十六計:指桑罵槐(しそうばかい)
桑を指(ゆびさ)して槐(えんじゅ)を罵(ののし)る。
本当に批判したい相手ではなく、別の相手を批判することで間接的に批判する。
■第二十七計:仮痴不癲(かちふてん)
痴を仮(いつわ)るも癲せず。
バカになったふりをして相手を油断させる。
■第二十八計:上屋抽梯(じょうおくちゅうてい)
屋に上げて梯(はしご)を抽(はず)す。
敵をそそのかし引きつけ、補給や援助を断って殲滅する。
■第二十九計:樹上開花(じゅじょうかいか)
樹上に花を開(さか)す。
小兵力をあたかも大兵力であるかのように見せかける。
■第三十計:反客為主(はんかくいしゅ)
客を反して主と為す。
客の立場にあるものが、内から乗っ取りをかけ、主人の座を奪い取る。
敗戦の計
こちらがきわめて劣勢の時の戦略。
絶体絶命のピンチでも、最後まであきらめてはいけない。
■第三十一計:美人計(びじんけい)
美人の計。
色仕掛けで相手のやる気をなくさせる。相手を籠絡して、やる気をなくさせる。
■第三十二計:空城計(くうじょうけい)
空城の計。
味方が劣勢で勝ち目がない時、わざと無防備のように見せかけて敵の判断を惑わす。
■第三十三計:反間計(はんかんけい)
反関の計。
偽の情報や内通者を使い、敵の判断を惑わす。
■第三十四計:苦肉計(くにくけい)
苦肉の計。
わが身を痛めつけて敵を信用させ、敵を欺く。
■第三十五計:連環計(れんかんけい)
連環の計。
敵が互いに足を引っ張るように仕向け、行動力・判断を惑わす。
■第三十六計:走為上(そういじょう)
走(に)ぐるを上と為(な)す。
勝算のないときは、戦ってはならない。
最後に
ここまで、兵法書の1つ『兵法三十六計』について紹介しました。
大昔の古代中国で書かれた戦いの書物でありながら、現在を生きる私たちにも使え、通用する兵法が多いことに驚かれたのではないでしょうか。
三十六個の策略はどれも漢字四文字か三文字で覚えやすく、自分のお気に入りの計を探すのも楽しいのではないでしょうか。
ちなみに私がお気に入りの計は、第三十六計:走為上です。「勝ち目のない時はさっさと引いて、次に備える」人生を楽しむコツが詰まった策略だと思います。
今回紹介した「兵法三十六計」以外にも兵法書は、古今東西いくつもあります。
またの機会に紹介したいと思います。
