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【おすすめの本】アニメにはない「ゲド戦記」原作の魅力を伝えたい! 子どもから大人まで楽しめる時代を越えた物語

掲載日:2025/9/17

 



みなさん。世界3大物語を知っていますか?

一般的には、「指輪物語」「ナルニア国物語」「ゲド戦記」とされています。

 

指輪物語は、J・R・R・トールキンによる中つ国が舞台の作品で、「ロード・オブ・ザ・リング」として映画化もされました。いまだに、スピンオフ作品が作られる、世界中で人気の作品です。

 

ナルニア国物語は、C・S・ルイスによるナルニア国が舞台の作品で、こちらも全7作のうち、3作が映画化されています。

 

ゲド戦記は、アーシュラ・K.ル=グウィンによるアースシーが舞台の作品で、スタジオジブリによるアニメーション映画「ゲド戦記」は有名だと思います。また、あのハリーポッターシリーズにも影響を与えのだとか。

 

これらの物語作品は、世界3大物語と言われるだけあって、映画・アニメーション映画になっている有名作品ばかりです。

でも、原作を読んだことがある人は意外と少ないのではないでしょうか?

(一応私は、ナルニア国物語、ゲド戦記は読みました)

 

今回ご紹介する本は、世界3大物語の1つ、「ゲド戦記」です。

 

 

こんにちは。ドムドムです。
読書と本の収集が趣味の、本が大好きな私が、
「面白い!」
「悩みや疑問と向き合えた!」
「新たな知識の扉が開いた!」
と感動したおすすめの本を紹介します。

 

 

 

 

◆目次◆

 

本の概要

・タイトル:ゲド戦記

・著者:アーシュラ・K.ル=グウィン

・ページ数

  • ゲド戦記1「影との戦い」:317ページ
  • ゲド戦記2「こわれた腕環」:259ページ
  • ゲド戦記3「さいはての島へ」:365ページ
  • ゲド戦記4「帰還」:398ページ
  • ゲド戦記5「ドラゴンフライ」:558ページ
  • ゲド戦記6「アースシーの風」:386ページ

 

ゲド戦記の著者は、アメリカのSF作家”アーシュラ・K.ル=グウィン”氏です。

ゲド戦記は1作目の「影との戦い」が1968年に発行されており、指輪物語(1954年出版)、ナルニア国物語(1950年出版)と比べると、10年ほど後に誕生した物語です。

 

ゲド戦記は1話完結の、計6シリーズで構成されています。

  • 影との戦い(1968年)
  • こわれた腕環(1971年)
  • さいはての島へ(1972年)
  • 帰還(1990年)
  • ドラゴンフライ(2001年)
  • アースシーの風(2001年)
  • 火明かり(2025年)※日本語版オリジナル編集

 

ゲド戦記としては「影との戦い」「こわれた腕環」「さいはての島へ」の前3部作だけで、ひとつの完結をしています。続く3部作+日本語版オリジナルの1作は、ゲド戦記の流れを汲みつつも、別の物語として楽しむことができます。

今回の記事で紹介するのは、この前3部作です。

 

「さいはての島へ」から18年後に発表された「帰還」「ドラゴンフライ」「アースシーの風」の3部作。2025年5月に日本語版オリジナル編集として、作者の没後に発表された「ゲド戦記」最後のエピソード「火明かり」は、別の機会にご紹介します。(火明かりは未読です)

 

物語の舞台:アースシー

物語の舞台は、幾つもの島が集まった海域「アースシー」です。

アースシーには大きな大陸は存在せず、中央に最大の島「ハブナー島」が存在します。

 

島ごとに特色が分かれており、

かつてアースシーを支配していた王の首都「ハブナー島」。

魔法使いの学院を擁するアースシー世界の中心「ローク島」。

さいはての島と呼ばれる「セリダー島」。

など、物語は特色豊かな島々をめぐる冒険として進んでいきます。

 

国は2つ登場し、

ハード語を使用し、魔法を使う「ハード語圏」。

魔法を嫌い、独自の神を祀る「カルガド帝国」。

その他、上記のどちらにも属さない小さな島々が登場します。

 

そして、ファンタジーには欠かせない「魔法」「竜」も登場します。

 

魔法使いは、病を治す、漁師のために天候を操作する、姿を変える、といった魔法が使える存在で、民衆から頼りにされ慕われています。

アースシーの中心「ローク島」には、魔法使いを養成する学院があり、アースシーの島々から多くの学生が訪れ、魔法を学ぶべく励んでいます。

魔法を教えるのは、風の長、手わざの長、薬草の長、詩の長、姿かえの長、呼び出しの長、様式の長、守りの長の計9人の「ロークの九賢人」と呼ばれる魔法使い。束ねるのは、アースシーで一番偉大な魔法使い「大賢人」です。

 

竜は、はるか昔から生きてきた存在で、「まことのことば」で会話をします。人間を騙すこともあれば、助言を与えることもある「畏れるべき存在」として、物語の重要な場面で登場します。

 

もう1つ。ゲド戦記を語る上で欠かせないのが「真の名(まことのな)」

人の名前には通り名とは別に真の名があり、人以外にもすべてのモノ(タカ、水、風などの神羅万象)が、真の名を持っています。

この真の名を知ることで、魔法で風を起こしたり、病を治したり、対象を操ることができます。そのため「真の名」は、他人に滅多に明かすことのない大事なものです。

 

ここまで、ゲド戦記の世界について紹介しました。

ゲド戦記には、魔法や竜といったファンタジー要素があるものの、児童向けの本と言うわけではなく、子供から大人まで学ぶことがある「時代を越えた物語」です。

 

それでは、ネタバレにならない程度に前3部作「影との戦い」「こわれた腕環」

「さいはての島へ」を紹介します。

 

 

 

 

「影との戦い」

ことばは沈黙に

光は闇に

生は死の中にこそあるものなれ

飛翔せるタカの

虚空にこそ輝ける如くに

ー『エアの創造』-

冒頭のこの一句によってゲド戦記は始まります。

 

1作目の主人公はハイタカ。真の名はゲド

後に若くして「竜王」「大賢人」の名誉を与えられ、「ゲドの武勲(いさおし」をはじめ多くの歌になって、うたいつがれる男です。

「影との戦い」は、ゲドの若き日の物語です。

 

ゲドは、魔法使いを数多く輩出した「魔法使いとヤギの島」ゴント島で、鍛冶屋の息子として生まれます。幼くして母を亡くし、まじない師の叔母によって育てられます。

叔母から魔法を教わり、ある時村を訪ねてきた「沈黙のオジオン」という大魔法使いに出会います。オジオンは、ゲドがただの子どもでないことを見て取り、弟子にして「ゲド」という真の名を授けます。

ここから「ゲド戦記」は始まるのです。

 

オジオンの元で修行するゲドですが、より魔法を学びたいとローク島の魔法学院へ旅立ちます。

魔法学院の大賢人ネマールの導きもあり、メキメキ頭角を現すゲド。

しかし、高慢・嫉妬・憎しみからある時、「死者を呼び出す呪文」を唱えてしまいます。

呼び出された名前がない死人の霊(影)によって、光と闇、生と死、善と悪といった「世の中の均衡」が破れてしまいます。

さらに、名前のない影はゲドを乗っ取って操ろうと、ゲドを追ってきます。

影から逃げるゲドと執拗に追う影。影とゲドとの戦いが、アースシーの島々で始まります。

 

 

ゲド戦記1作目の「影との戦い」。

影との戦いでゲドはアースシーの数々の島を訪れ、多くの人に出会います。

アースシーの世界観を知る手掛かりは、章の始めの挿絵と、綴られた言葉のみ。読者それぞれの創造力で、アースシーの世界を思い描くことができます。

 

 

 

「こわれた腕環」

シリーズ2作目の「こわれた腕環」の主人公は、カルガド帝国の少女テナー

カルガド帝国は、白い肌を持ち、魔法を受け入れない軍国主義的な国家として描かれています。

 

カルガド帝の神聖なる神殿「アチュアンの墓所」の大巫女となったテナー。

アチュアンの墓所は「名なき者たち」と呼ばれる、古の大地の霊を祀る神聖な場所です。しかし、時代の経過とともに名なき者たちへの信仰も薄れ、王も滅多に訪れなくなりました。

 

ある時テナーは、外部の世界から浅黒い肌をした男がアチュアンの墓所に侵入したと聞かされます。アチュアンの墓所には、大昔から伝わる宝物があると伝えられており、男は宝物を盗みにきた盗人だと思われました。

テナーは男が墓所で疲れ果てるのを待ち、鎖で捉えます。

大巫女として孤独だったテナーは男に興味を持ち、食事と水を与え尋問をします。

会話の中で男が「アースシーに平和をもたらす、エレス・アクベの腕環の半分を探しに墓所に来た」ことを知ります。

この男こそ、1作目の主人公ゲドなのです。

 

テルーはゲドから、外の世界の話や名なき者たちの真実を告げられ....

 

 

シリーズ2作目の「こわれた腕環」は、1作、3作と異なりカルガド帝国が舞台です。また、ゲドの立ち位置も主人公や、主人公の助言者と言うよりも「テナーの知らない世界の他者」という存在として描かれています。

墓所しか知らないテルーに、初めて外部の世界を伝えてくれたゲド。「こわれた腕環」では、勝手に与えられた大巫女の立場としてのテナーと、一人の人間としてどう生きるのか、といった「務めと自由の葛藤」がテーマだと思いました。

 

自由の重さ。自由はそれを担う者にとって、実に重い荷物である。勝手のわからない大きな荷物である。それは、決して気楽なものではない。自由は与えられるものではなくて、選択すべきものであり、しかもその選択は、かならずしも容易なものではないのだ。

坂道をのぼった先に光があることはわかっていても、重い荷を負った旅人は、ついにその坂道をのぼりきれずに終わるかもしれない。

(アーシュラ・K.ル=グウィン. ゲド戦記2 こわれた腕環. 岩波少年文庫, 2023, p241)

 

 

 

 

 

「さいはての島へ」

シリーズ3作目の主人公はまたまた変わって、アースシーでも古い島エンラッドの王子アレン

 

西の島々で魔法の力が失われ、エンラッド島でも呪文の効果が無くなっていることを伝えるため、大賢人がいるローク島を訪れます。

出迎えたのは大賢人ゲド。ゲドは数々の偉業により大賢人になっていたのです。

ゲドも魔法が日に日に弱まり、太陽の光も薄くなっていることに気付いており、原因を究明するために、アレンと旅に出ることにします。

 

目的地は不明で、北にも南にも西そして東にも旅をしますが、どこでも手掛かりはつかめず。しかし、あらゆる場所で魔法の力が失われていることが分かりました。

誰もが働きもせず無気力になり、死者がよみがえったと言っている人にも出会います。

旅を続ける中で、アレンは魔法を全く使わないゲドに不信感を募らせ、何のために旅に同行したのか自問自答するようになります。

 

ある時、ゲドになぜ魔法を使わないのかと聞くと、「均衡が崩れてしまうからだ」と言うのです。

「何かをするのは簡単なことではない。石ころだって投げて終わりというわけにはいかない。石が拾い上げられれば、大地はその分軽くなる。石を持つ手はそれだけ重くなる。石が投げられれば星の運行はそれに応え、石がぶつかり、落ちれば神羅万象、変化が起きるのだ」と。

そうして、大切なのは「何かすることではなく、何もしないことだ」とアレンを諭すのです。

 

旅を続けるうちに少しずつアレンも成長し、竜の導きで2人は問題の元凶にたどり着くのですが....

 

3作目の「さいはての島へ」は、大賢人となったゲドと王子アレンによる旅の物語です。

光と影、死と生、人間と竜、あらゆるものが均衡の上に成り立っていて、大賢人のゲドでさえ均衡から外れることはできない。旅を通して、均衡とは何か。ゲドの言葉・行動からつぶさに感じることができます。

ゲド戦記の大きなテーマである「均衡」「成長」「生と死」が最も感じられるのが、3作目「さいはての島へ」だと思います。

 

死を拒絶することは生を拒絶することでもあるんだよ。

(アーシュラ・K.ル=グウィン. ゲド戦記3 さいはての島へ. 岩波少年文庫, 2023, p228)

 

 

 

 

最後に

 

ここまで、いかがだったでしょうか。

スタジオジブリのゲド戦記とはまた違った面白さ、物語性が感じられたと思います。

 

ことばは沈黙に

光は闇に

生は死の中にこそあるものなれ

飛翔せるタカの

虚空にこそ輝ける如くに

ー『エアの創造』-

1作目「影との戦い」の冒頭の一句。

この言葉がゲド戦記を通して一貫するテーマだと思います。

「光と闇(影)」「生と死」。

皆さんもゲド戦記を読んで、アースシーの世界を訪れてみてはいかがでしょうか。