今年も数年に一度レベルと言われる「大寒波」が到来し、日本海側では連日雪が降り積もっているようです。
そんな1年間で最も寒い季節である、1月後半から2月前半ですが皆さんはどのようにお過ごしでしょうか?
私は、仕事から帰宅するとすぐに布団に包まり、土日はコタツに入って「グータラ」しています。
・暖房器具をうまく使ってぬくぬくと
・コタツからでない
・寒さに負けず外出している
など、お住いの地域によって寒さの度合いは異なり、生活スタイルも様々だと思いますが、「雪が降っている寒い日に温かいコタツで食べるミカンのおいしいさ」は、日本全国どこでも同じだと思います。
今回は、雪が降っている寒い日に、「コタツに入って」「布団に包まって」読むのにピッタリの本を紹介します。
こんにちは。ドムドムです。
読書と本の収集が趣味の、本が大好きな私が、
「面白い!」
「悩みや疑問と向き合えた!」
「新たな知識の扉が開いた!」
と感動したおすすめの本を紹介します。
本のタイトルは、『世界最悪の旅』です。
本の概要
- タイトル:世界最悪の旅
- 著者:チェリー・ガラード
- 訳者:加納 一郎
- ページ数:312ページ
本書は、南極探検に挑んだイギリス南極探検隊のメンバーの1人「チェリー・ガラード」によって書かれた本です。
人類未踏の地「南極」での探検記録を詳細に記録した本で、極地文学の金字塔と言われる1冊です。
時は約100年前の1910年代。各国が「北極」「南極」への極点到達を争っていた時代。
1909年にはアメリカ人のロバート・ピアリーが、北極点に到達。
地球最後のフロンティアを目指して、イギリスのスコット率いるイギリス南極探検隊の挑戦が始まります。
気温が-60℃にもなり、息をする・食べる・寝るといった、生きていくうえで当たり前のことすら難しい南極という極寒の世界。
本書は、イギリス南極探検隊が経験した、極地での事実が書き記され、読者が家にいながら追体験できるリアリティです。
南極での探検
旅の目的はペンギンの卵?
本書のタイトルにある「世界最悪の旅」。
旅の目的は何だっと思いますか?
・人類初の南極点到達
・財宝探し
・宇宙人の痕跡探し(笑)
どれも違います。
命の危険を冒してまで旅をした目的は、
皇帝ペンギンの卵を探すためでした。

今では動物園で見れるペンギン。
そのペンギンの卵のために、命を懸けたの?と驚かれることと思います。
しかし当時は、「皇帝ペンギンはすべての鳥の中で最も原始的な生物であり、皇帝ペンギンの卵(胚)を調査することで、鳥類の進化の歴史に迫れる」と考えられていたのです。
ペンギンに限らず、イギリス南極探検隊の目的は、南極の地質や環境を調査する科学探検でした。
実際イギリス南極探検隊のメンバーは、動物学者・地質学者・物理学者などが多く、科学探検としての性質が強かったのです。(著者のガラードも動物学者として、科学探検に参加しています。)
知りたいと思う探求心で彼らは、命の危険を冒してまで南極探検に挑んだのです。
平均気温-40℃の暗闇を進む
ガラードを含めた3人の探検隊は、皇帝ペンギンの卵を求め、拠点から100km先のペンギンの営巣地を目指します。
100kmと言われると、2日くらいで到着できそうに思えますが、ここは南極。
茶色い見慣れた地面は見えず、あるのは雪に覆われた大地のみ。足が沈みこむような雪の上を、荷物を積んだソリをひいて進まなければなりません。
また、運ぶ荷物の量も尋常ではありません。
食料・燃料・寝袋・テントといった必需品など計343kgもの荷物を、3メートルもある2台のソリに載せて、人力でひいていかなければならないのです。
本書には実際に持っていた荷物がリストアップされており、ビスケット66kg、ペミカン50kg(乾燥させた肉、脂肪などを混ぜて固めた高エネルギー携帯保存食)、バター9.5kg、油27kgなど、食料品だけで荷物の三分の一を占めていたことが分かります。
興味深いのは、茶を1.8kg持って行っていること。イギリスと言えば紅茶のイメージがありますが、極地においても紅茶は欠かせなかったのですね。

極地探検に欠かせない保存食:ペミカン
さらにダメ押しとばかりに、探検隊が挑むのは真冬の南極です。
皇帝ペンギンのヒナが9月に確認されたことから、産卵は7月にしていると考えられ、探検は真冬にされました。
日本で7月と言えば夏ですが、南極は南半球に位置しているため、季節は北半球の日本とは逆の冬です。
そして、冬は冬でも日本の冬とはわけが違います。(北海道や日本海側の人は苦労されていると思いますが)
南極の冬は「極夜」という、一日中太陽が昇らない季節が1カ月も続きます。
もちろん南極に夜を照らす明かりなどありません。伸ばした手も見えない暗闇で、感覚だけを頼りに進まなければならないのです。
また、冬の南極の気温は平均-40℃。寒いときには-60℃にもなるというのですから、気温だけ聞いても探検の大変さをうかがい知ることができます。
こんな感じで、探検隊は「平均気温-40℃の暗闇を、343kgのソリをひいて、不安定な足元に注意しながら、100km先のペンギンの営巣地」を求めて出発したのです。
世界最悪の旅始まる
平均気温-40℃の中、冬の南極探検がいよいよ始まります。

本書には、筆者が経験したありのままが事実を誇張することなく、つづられています。
ここからは、探検がいかに過酷だったかうかがい知ることができる、エピソードを2つ紹介します。
あらゆるモノが氷になる

Youtubeやテレビなどで、世界一寒い街ではコップの水があっという間に凍り、洗濯物もカチコチになるなど、紹介されているのを見たことがあると思います。
このあらゆるモノが瞬時に凍るというのは、平均気温が-40℃の南極も同じです。
文字通り、あらゆる水分があっという間に凍ってしまうのです。
この寒さによって大変なのが、「汗と息」。
息をすると吐いた空気が瞬時に凍って、帽子や額に張り付き、顔の下半分は氷で覆われてしまいます。
また、汗は毛穴から出るとすぐに固まってしまい、息や汗が衣服に張りつき装甲板のように固くなって身動きができなくなるほどなんだとか。
装甲板のようにカチカチになった衣服を着てソリを引くのは、とてつもない体力を消耗し、溶かして乾かそうとすれば4時間かかるそうです。
動物が生きていくうえで必要な、呼吸や発汗といった生理現象でさえ、南極では命がけなのです。
著者は、衣服がカチコチに凍ることがいかに行動に影響を及ぼすかを、次のように述べています。
もし我々が鉛の着物を着ていたら、これよりもっとたやすく腕や首や頭を動かすことができるであろう。
(チェリー・ガラード. 世界最悪の旅. 中公文庫, 2016,p.105)
この言葉から、寒さによってあらゆるものが凍ってしまうことで、探検に大きな影響を及ぼしたことが知ることができます。
一番つらいのは寝る時間?
南極で大変なこと2つ目は、睡眠です。
重い荷物を積んだソリを1日中引っ張り疲れ切った身体。
疲れを癒すために、必要なのが睡眠です。
しかし、ここは南極。眠るのも一筋縄ではいきません。
少しでも暖かいところで眠られるように、テントやトナカイの毛皮で作られた寝袋、羽毛布団など、睡眠機材を持っていくのですが、寒すぎて全く眠れないのです。
皆さんも、秋から冬に季節が変わるときに、まだ大丈夫だと思って薄い布団で寝て、寒さで目が覚めたことはないでしょうか?
最低気温-60℃という極寒では、カチコチに固まった寝袋の中に頑張って入っても、寒さと寝袋の固さで少しも眠れず、疲れも取れないのです。
著者は、寝袋の中が最も嫌な空間だとして、日記に次のようにつづっています。
面倒なのは、寝袋に入ってからである。寒気がとても激しいから、息をする孔をあけてはおけない。
従って、終夜われわれの息は毛皮に凍りつき、寝袋の中の空気はおいおいと汚れてくるとともに、いよいよ呼吸は激しくなってくる。
(チェリー・ガラード. 世界最悪の旅. 中公文庫, p.84)
寒いからといって布団を被って寝ると、息が苦しくなることがあり、通常はできません。
しかし、南極で寝袋に空気孔を開けるという行為は死に直結します。
寝袋という密閉された環境で、息をすれば中の空気はよどんで、ますます呼吸が難しくなってくる。この一文だけでも、極寒の寝袋での睡眠がいかに大変かわかります。
これ以外にも、著者は様々な表現を使って睡眠がいかに苦痛であったか、読者に訴えます。
またしてもまたしても身体がふるえてきて、どうしても止めることができなかった。
それが数十分も続くのであるから、ある時など私の背中が裂けたのではないかと思うくらいに、そこに痛みが感じられた。
(チェリー・ガラード. 世界最悪の旅. 中公文庫, 2016,p.87)
このソリ旅行では、はじめから終わりまで実にいろいろなことに出会った。そこには(中略)単調さというものはまったくなかった。
ただ一つだけ恐ろしい寝袋に横たわっている間、この低温の毎夜毎夜を、毎時毎時をふるえていなければならなかったこと、それだけが単調なものであったと言える。
(チェリー・ガラード. 世界最悪の旅. 中公文庫, 2016,p.107)
病人であろうと健康な人であろうと、このような寝袋のなかで寒さのためにガタガタふるえ、ほとんど背中が裂けるかと思うくらいつらい目にあった我々以上にひどい目にあった人はあるまいと思う。
(チェリー・ガラード. 世界最悪の旅. 中公文庫, 2016,p.146)
人間の楽しみの一つである睡眠。疲れもたまっているのに、眠れないのはさぞつらいことだろうと、読んでいていて思いました。
寒い季節にポカポカの布団でぐっすり眠れる。
本書を読んで、そんな当たり前だと思っていたことに対して、ありがたみが感じられました。
最後に
寒い冬にピッタリの本「世界最悪の旅」はいかがだったでしょうか?
著者はこの探検の厳しさを、次の言葉でまとめています。
南極探検は人々が想像する程ひどいことはめったにないものであるし、うわさほどに悪絶なこともまれである。
しかしながらこの旅行はわれられの文章の及ぶところではなかった。
いかなる言葉もその恐ろしさを表現することはできない。
(チェリー・ガラード. 世界最悪の旅. 中公文庫, 2016,p.148)
経験した本人でも表現することができない程、恐ろしい探検とはいかほどか私には想像もできません。
南極探検、北極探検など、命の危険がある探検に挑む者には常に、
命を投げ出しても「そんなことをする値打ちがあるのか」「なんのためにそんなことをするのか」といった疑問を投げかけてくる人たちがいます。
この疑問に対し著者は言います。
我々が命を投げ出して探検するのは「知識のため」であると。
知らないことを知りたいと強く思う欲求が、南極に人類を運んだのです。
皆さんも知らないことに対する欲求をバネに、新たなことに取り組まれてはいかがでしょうか。
今回紹介したのは、世界最悪の旅に編纂されている「ペンギンの卵」を探す旅ですが、本書にはもう一つ「スコット南極探検隊」のことも編纂されています。
気になる方は、ぜひ手に取って読んでみてください。
本書には、励まされるような言葉が多く登場します。
いずれ名言の紹介でも取り上げますので、お楽しみに。
